2-20. ESG評価対応に必要なEHSデータ収集・整理の実務ノウハウ
- yutofukumoto
- 8月20日
- 読了時間: 3分
更新日:8月22日
近年、投資家や取引先からのESG評価への対応が求められる中で、企業のEHS(環境・安全・衛生)データの収集と整理は極めて重要な実務課題となっています。環境(Environment)、労働安全衛生(Health & Safety)に関する情報を正確かつ一貫性を持って提供できなければ、評価の低下や取引機会の喪失につながる可能性があります。ここでは、ESG評価に必要なEHSデータの収集・整理方法と、実務に役立つノウハウを解説します。
1. EHSデータ収集の基本項目
ESG評価で必須とされるEHSデータは、以下のような項目に分類されます。
・ 環境データ:エネルギー使用量、CO2排出量、廃棄物の発生量とリサイクル率、水使用量、化学物質排出量。
・ 安全衛生データ:労働災害件数、休業損失日数、労働安全衛生教育の実施回数、安全監査結果。
・ 労務関連データ:労働時間管理、従業員の健康診断受診率、メンタルヘルス対応状況。
これらのデータは定期的に収集し、第三者に提示できる形で管理する必要があります。
2. データ収集の仕組みづくり
EHSデータは部門ごとに分散していることが多く、情報の一元化が課題になります。
・ 責任部署の明確化:環境データは環境管理部門、安全衛生データは総務や人事など、それぞれの収集責任を明確化します。
・ 標準フォーマットの導入:Excelや専用システムを活用し、共通のフォーマットで入力させることで集計効率を高めます。
・ 定期収集サイクルの設定:月次・四半期ごとの収集スケジュールを定め、遅延や欠落を防ぎます。
3. データの整理と信頼性確保
ESG評価ではデータの正確性と透明性が重要視されます。
・ 証跡の保存:測定結果、契約書、報告書など、数値の裏付けとなる証拠を必ず残します。
・ 外部基準との整合:GHGプロトコルやGRIスタンダード、SASB基準など国際的なフレームワークに準拠した整理が望まれます。
・ クロスチェック体制:内部監査や第三者検証を通じ、データの信頼性を担保します。
4. 効果的な見せ方と報告
ESG評価機関や投資家に向けた報告では、単なる数値の羅列ではなく、改善のストーリーを示すことが有効です。
・ KPIの設定:CO2排出原単位削減率や災害発生率低減など、達成状況を数値化。
・ グラフや図表の活用:視覚的にわかりやすく整理することで、第三者の理解を促進します。
・ 改善事例の提示:単なる数値報告ではなく、省エネ施策や安全教育の具体事例を添えることで説得力が高まります。
5. デジタルツールの活用
最近では、ESG対応に特化したEHSデータ管理システムが普及しています。自動集計やクラウド管理により、データの即時性と透明性を確保でき、外部監査にも対応しやすくなります。
EHSデータ収集・整理を体系的に行うことは、ESG評価の向上だけでなく、社内のリスク管理や生産性向上にも直結します。日常的なデータ管理の精度を高めることが、持続可能経営の基盤となるのです。


