3-12. M&AにおけるEHSデューデリジェンスの実務と経営インパクト
- yutofukumoto
- 2025年8月20日
- 読了時間: 2分
更新日:2025年8月22日
M&A(企業の合併・買収)において、EHS(環境・労働安全衛生)デューデリジェンスは財務・法務と並ぶ重要な検討領域です。買収対象企業が抱える環境負債や労働安全衛生上のリスクを見落とすと、統合後に予期せぬコストや訴訟、ブランド毀損につながる恐れがあります。適切なEHSデューデリジェンスを行うことは、経営判断の質を高め、M&Aの成否を左右する要素となります。
1. EHSデューデリジェンスの目的
EHSデューデリジェンスの第一の目的は、対象企業が法令遵守をしているか、過去や将来にわたる環境汚染や労災リスクを抱えていないかを明らかにすることです。特に土壌汚染、アスベスト、廃棄物不適正処理、化学物質管理違反はM&A後に巨額の修復費用や制裁金を発生させる可能性が高く、必ず確認すべきポイントです。
2. 実務の流れ
EHSデューデリジェンスは通常、以下のステップで進めます。
・ 情報収集:許認可書類、監査報告書、環境影響評価レポート、労災記録などを精査します。
・ 現地調査:工場や施設の現場確認を行い、潜在的な環境汚染や安全上の問題を把握します。
・ インタビュー:環境管理責任者や労務管理担当者にヒアリングし、運用レベルでのコンプライアンス状況を確認します。
・ リスク評価:不適合事項を洗い出し、是正に必要なコストや将来の法的リスクを金額換算して経営判断に資する情報を提示します。
3. 経営へのインパクト
EHSデューデリジェンスを軽視すると、買収後に環境汚染浄化費用や労働災害対応コストが数十億円規模に膨れ上がる事例もあります。逆に、徹底した調査により潜在リスクを事前に把握すれば、買収価格の調整や保証条項の設定でリスクヘッジが可能です。また、統合後に労働安全衛生体制を強化すれば、従業員エンゲージメントや生産性向上につながり、買収シナジーを高める効果もあります。
4. 投資家・ステークホルダーの視点
近年はESG投資の拡大により、投資家もM&Aの際にEHSリスクを重視しています。環境負債や労務リスクが顕在化すれば、投資家からの信頼低下や株価下落を招く可能性があります。透明性の高いデューデリジェンスを実施し、その結果を適切に開示することは、ステークホルダーとの信頼関係構築にも直結します。
5. まとめ
M&AにおけるEHSデューデリジェンスは、単なるリスク確認にとどまらず、統合後の企業価値向上のための戦略的プロセスです。徹底した調査と適切な経営判断により、リスクを最小化しつつ新たな成長機会を獲得することが可能になります。


