3-16. 経営リスクマネジメントにおけるEHSの位置づけ
- yutofukumoto
- 8月20日
- 読了時間: 3分
更新日:8月22日
経営リスクマネジメントにおいて、EHS(環境・労働安全衛生)は重要な位置を占めています。環境規制違反や労働災害の発生は、単なる罰則や損害賠償にとどまらず、企業の信用失墜や株価下落、取引停止など深刻な経営リスクにつながります。そのため、EHSを戦略的リスクマネジメントの一環として捉えることが、持続可能な成長のために不可欠です。
1. 経営リスクとしてのEHS課題
EHS分野には「法規制リスク」「事故・災害リスク」「風評リスク」の3つが存在します。環境法令違反や有害物質の不適切管理は罰金や操業停止処分につながり、労災は補償金や労働力喪失を招きます。また、SNSを通じて瞬時に広がる風評被害は、短期間で企業ブランドを毀損します。これらはすべて経営に直結する重大リスクです。
2. リスクマネジメント体制におけるEHSの統合
グローバル企業では、EHSを「財務リスク」「サプライチェーンリスク」と並ぶ重要カテゴリーとして位置付けています。ISO31000などのリスクマネジメントフレームワークにEHSを組み込み、リスクマトリクスを用いて発生頻度と影響度を評価することが一般的です。EHSリスクを定量的に把握することで、経営層は投資判断や戦略策定に反映できます。
3. 経営層の責任と説明力
経営リスクマネジメントの観点からは、EHSは取締役会や経営会議で定期的に報告されるべきテーマです。特に、重大事故や規制違反が発生した場合には、経営者が投資家や行政機関、メディアに対して説明責任を果たす必要があります。トップのコミットメントが不十分であると、ガバナンス欠如と評価され、株主からの信頼を失う可能性があります。
4. サプライチェーンとEHSリスク
企業単体の対応にとどまらず、サプライヤーのEHS違反も大きな経営リスクとなります。児童労働や環境汚染が報じられると、発注元企業も責任を問われ、取引停止や不買運動につながる事例もあります。そのため、調達方針にEHS基準を盛り込み、監査・教育を通じてリスクを低減することが不可欠です。
5. 企業価値向上につながるEHSリスクマネジメント
EHSを経営リスクとして統合的に管理することは、単なるリスク回避にとどまらず、企業価値の向上につながります。環境対策への先行投資は省エネやコスト削減を実現し、安全文化の浸透は従業員エンゲージメントを高めます。これらはESG投資家からの評価を高め、資本調達力の強化にも直結します。
まとめ
経営リスクマネジメントにおけるEHSの位置づけはますます重要になっています。法令遵守や事故防止を超えて、企業ブランドや投資家評価に直結する経営課題であり、戦略的リスクマネジメントの柱として捉えることが、持続可能な成長の鍵となります。


