3-2. 取締役会で問われるEHSリスクと経営者の説明責任
- yutofukumoto
- 8月20日
- 読了時間: 3分
更新日:8月22日
近年、EHS(Environment, Health, Safety:環境・安全・衛生)リスクは企業経営において無視できない重要課題となっています。労働災害や環境事故が発生すれば、操業停止や法的制裁、社会的信用の失墜につながり、経営に甚大な影響を及ぼします。そのため、取締役会ではEHSリスク管理の適切性と、経営者による説明責任の遂行が強く求められるようになっています。ここでは、取締役会で問われるEHSリスクの内容と、経営者に必要な説明責任について解説します。
1. 取締役会で問われるEHSリスクの内容
取締役会では、主に以下の観点からEHSリスクが議題に上がります。
・ 法令遵守リスク:労働安全衛生法、環境基本法、廃棄物処理法、PRTR法などに違反した場合の罰則や行政指導。
・ 操業リスク:労働災害や爆発・火災事故による操業停止、供給停止による顧客への影響。
・ 財務リスク:労災補償や環境修復費用、行政罰による金銭的負担。
・ レピュテーションリスク:事故や違反によりブランドイメージが毀損し、取引先や投資家からの信頼を失う。
・ ESG投資リスク:EHSに関する開示不足や不適切な対応がESG評価の低下を招き、資金調達力や株価に影響。
2. 経営者の説明責任の範
取締役会における経営者の説明責任は、単なる事故報告にとどまりません。
・ リスク認識の明確化:どのようなEHSリスクが存在し、どの程度の影響を及ぼすかを定量・定性の両面から説明する必要があります。
・ 対策と管理体制の提示:リスクアセスメント結果、緊急対応マニュアル、教育訓練の実施状況など、予防策と管理体制を具体的に説明することが求められます。
・ KPIと成果の共有:労働災害発生率の低下、CO2排出削減率、監査不適合の是正状況など、進捗を測定可能な指標で示すことが有効です。
・ 将来予測と改善計画:新たな規制動向や国際基準への対応を踏まえ、今後の改善計画を示すことが説明責任の一部となります。
3. 説明責任を果たすための実務ポイント
・ 定期的なリスクレビュー:四半期ごとにEHSリスクを評価し、取締役会に報告する仕組みを整備します。
・ データの透明性確保:外部監査や第三者検証を活用し、説明に裏付けを持たせます。
・ インシデント事例の分析共有:他社の事故や社内ヒヤリハット事例を取締役会に報告し、再発防止策を議論することが効果的です。
・ ESGレポーティングとの連動:統合報告書やサステナビリティ報告書で開示する内容と一貫性を持たせ、投資家対応にもつなげます。
4. 企業価値向上につながる説明責任
経営者がEHSリスクについて取締役会で的確に説明することは、単なる義務履行にとどまらず、ガバナンスの強化と企業価値の向上に直結します。透明性ある説明を通じてステークホルダーの信頼を獲得できれば、リスク低減と同時に競争優位性を高めることができます。
EHSリスク管理は、経営戦略そのものと密接に関わっています。取締役会での説明責任を果たすことは、企業が持続的に成長するための必須要件といえます。


