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3-6. 経営に資する労働安全衛生データ活用 ― 人的資本経営との接点

  • yutofukumoto
  • 8月20日
  • 読了時間: 3分

更新日:8月22日

近年、人的資本経営の重要性が高まり、従業員の健康・安全・働きやすさを確保することが企業価値向上につながると認識されるようになっています。その中で、労働安全衛生(OSH: Occupational Safety and Health)データの活用は、単なるリスク管理にとどまらず、戦略的な人的資本経営の一環として位置付けられています。ここでは、労働安全衛生データを経営に生かす方法と、人的資本経営との接点について解説します。



1. 労働安全衛生データの種類と意義


労働安全衛生データには、労災発生件数、休業災害率、ヒヤリハット件数、定期健康診断結果、ストレスチェック結果、長時間労働状況などが含まれます。これらのデータは、現場のリスク管理に活用されるだけでなく、従業員の健康状態や働き方の実態を把握する重要な経営指標となります。



2. 人的資本経営と労働安全衛生データの接点


人的資本経営では、「人材をコストではなく資産として捉え、投資対象とする」という考え方が基本です。労働安全衛生データは、この投資効果を測定するための基盤となります。


・ 従業員の健康維持=生産性向上:健康データを分析し、疾病予防や過重労働対策を講じることで、生産性低下を未然に防ぎます。

・ 労働災害防止=リスク低減:災害データを分析して改善策を導入することは、操業停止リスクや補償コスト削減につながります。

・ エンゲージメント向上=離職率低下:ストレスチェックや職場環境データをもとに改善を行うことで、従業員満足度や定着率を高めます。



3. 経営に資する活用方法


労働安全衛生データを経営戦略に結びつけるには、以下のようなアプローチが有効です。


・ KPI化:労災発生率や健康診断受診率をKPIとして設定し、取締役会や経営会議で定期的にモニタリングします。

・ データの見える化:ダッシュボードを活用し、部署ごとのリスク状況や改善進捗を可視化します。

・ 人的資本開示との連動:有価証券報告書や統合報告書に、健康経営や安全指標を盛り込み、投資家に説明可能な形で開示します。

・ 予測分析:AIやビッグデータを用いて、過去の災害や健康データから将来のリスクを予測し、予防策に活用します。



4. 投資家と市場の評価


投資家は人的資本情報の開示を重視しており、労働安全衛生データはその中核を担います。特に、休業災害率や健康施策の成果を定量的に示すことで、ESG評価やサステナビリティ評価において高い評価を得ることが可能です。



5. 今後の展望


今後は、ISO45001や健康経営優良法人認定などの枠組みを活用し、労働安全衛生データを標準化・体系化して経営に活かす動きが進むと考えられます。また、人的資本経営と連動したデータ活用は、単なるリスク管理を超え、従業員の幸福度向上や企業価値創造へと直結していくでしょう。


労働安全衛生データの戦略的活用は、人的資本経営を支える柱であり、持続的成長を実現する企業にとって不可欠な取り組みです。

 
 
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