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3-7. 海外展開に伴うEHSコンプライアンス戦略

  • yutofukumoto
  • 8月20日
  • 読了時間: 3分

更新日:8月22日

グローバル化が進む中で、日本企業が海外拠点を設立・運営する際に直面する大きな課題の一つがEHS(Environment, Health, Safety:環境・安全・衛生)コンプライアンスです。各国の法規制や文化的背景に対応しながら、全社的に統一されたEHS管理を実現することは容易ではありません。しかし、海外展開におけるEHSコンプライアンス戦略を適切に構築することは、事業リスクの低減と企業価値向上につながります。



1. 海外EHSコンプライアンスの特徴


海外では、日本と異なる法規制や執行体制が存在し、違反時のペナルティも厳しいケースがあります。たとえば米国OSHA(労働安全衛生局)の規制違反には高額な罰金が科され、EUではREACH規則やRoHS指令が化学物質管理に厳格な基準を課しています。また、労働安全に対する社会的期待や人権尊重の要求も高まっており、法令遵守のみならず、国際基準や顧客のCSR要件に応えることが不可欠です。



2. 戦略構築の基本ステップ


海外展開に伴うEHSコンプライアンス戦略は、以下のステップで構築することが効果的です。


・ 現地法令の把握:拠点のある国の環境規制、労働安全法、廃棄物規制などを調査・整理する。

・ ギャップ分析:自社のEHS管理体制と現地法規制の要求事項を比較し、改善が必要な領域を特定する。

・ グローバル方針とローカル対応のバランス:本社が統一方針を定める一方で、現地の文化・規制に合わせた柔軟な対応を組み込む。

・ 監査とモニタリング:内部監査や第三者監査を実施し、遵守状況を定期的に確認する。

・ 教育と人材育成:現地スタッフへの研修を通じて、EHSリテラシーを向上させる。



3. サプライチェーンを含む対応


海外展開では、自社工場だけでなくサプライヤーのEHS遵守状況も重要です。取引先が環境規制違反や労働安全事故を起こすと、自社のブランドに直接的な影響を及ぼします。そのため、調達契約にEHS基準を盛り込み、監査や改善指導を行うことが求められます。RBA行動規範や国際労働機関(ILO)基準などを参照したサプライチェーン管理は、国際的な信頼獲得にもつながります。



4. EHSコンプライアンスの経営的価値


海外でのEHSコンプライアンスは、単なるリスク回避にとどまらず、企業の持続的成長に直結します。法令違反による罰則や操業停止を防ぐだけでなく、グローバル顧客からの調達条件を満たし、ESG投資家からの評価向上を実現します。さらに、労働災害や環境事故の防止は従業員のモチベーションや現地社会との信頼関係構築にも寄与します。



5. 今後の展望


今後は国際基準(ISO45001、ISO14001、GRI、ISSB基準など)を軸に、グローバルで一貫性のあるEHS管理体制を構築する動きが加速します。また、デジタル技術を活用した法規制モニタリングや、AIによるリスク予測も導入されつつあります。


海外展開におけるEHSコンプライアンス戦略は、グローバル市場での競争力強化とリスクマネジメントを両立させる経営の中核施策といえます。

 
 
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