3-8. 気候変動リスクと事業継続計画(BCP)の融合
- yutofukumoto
- 8月20日
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更新日:8月22日
気候変動は、企業経営にとって深刻なリスク要因となっています。豪雨や台風、猛暑、洪水などの自然災害の激甚化に加え、エネルギー供給の不安定化や水資源の制約は、事業活動に直接的な影響を与えます。そのため、従来の事業継続計画(BCP)に気候変動リスクを統合し、持続可能な経営を実現することが重要になっています。ここでは、気候変動リスクを踏まえたBCPの考え方と実務上のポイントを解説します。
1. 気候変動リスクとBCPの接点
従来のBCPは、地震や火災、サイバー攻撃など突発的なリスクを想定して策定されてきました。しかし、気候変動に起因するリスクは「頻発」「長期化」「広域化」という特徴を持ち、従来型のBCPでは十分に対応できない場合があります。例えば、洪水による物流網の寸断や猛暑による作業環境悪化、電力需給逼迫による生産停止などが現実的なリスクとして浮上しています。
2. 気候変動リスク統合のステップ
気候変動を踏まえたBCP策定には、以下のステップが有効です。
・ リスク特定:IPCC報告書や国・自治体の気候予測データを活用し、自社拠点やサプライチェーンの気候リスクを特定します。
・ 影響分析:豪雨での工場浸水、猛暑による作業停止、停電による製造中断など、具体的な影響を洗い出します。
・ 優先順位付け:発生頻度と影響度を基準にリスクを評価し、優先的に対策を講じる領域を決定します。
・ 対策策定:拠点移転、設備の耐水化、再生可能エネルギー導入、在宅勤務制度整備など、実効性ある施策を検討します。
・ モニタリングと見直し:気候変動リスクは変化するため、定期的な見直しと改善が不可欠です。
3. サプライチェーンの視点
気候変動リスクは、自社だけでなく取引先や物流網にも影響します。主要サプライヤーが豪雨や干ばつで操業停止に追い込まれれば、自社の生産も直ちに停滞します。そのため、調達先の気候リスク評価を行い、代替供給先の確保や多拠点化を進めることが重要です。また、取引先と連携した共同BCP策定も効果的です。
4. 投資家・顧客からの要求
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言により、気候変動リスクの開示は投資家の重要な評価基準となっています。企業がBCPに気候変動リスクを組み込むことで、金融市場からの信頼を高め、調達コストの低減や取引機会の拡大につながります。また、顧客からの調達要件として、気候リスク対応が必須となるケースも増加しています。
5. 今後の展望
AIやビッグデータを活用した気候リスク予測技術の進展により、BCPはさらに高度化していくと考えられます。将来的には、気候変動を前提とした「レジリエンス経営」が標準化し、単なる災害対策を超えて、事業戦略そのものに統合されるでしょう。
気候変動リスクとBCPの融合は、企業が不確実な環境下でも持続的に成長するための必須条件です。リスク管理を経営戦略に組み込み、レジリエントな企業体制を構築することが求められています。


