4-18. 国際サプライチェーンにおける温室効果ガス排出開示の義務化動向
- yutofukumoto
- 2025年8月20日
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更新日:2025年8月22日
近年、温室効果ガス(GHG)排出の開示義務化が国際的に加速しており、企業のサプライチェーン全体にわたる排出量把握が強く求められています。従来はScope1(直接排出)とScope2(購入エネルギー由来排出)が中心でしたが、現在ではサプライチェーンを含むScope3排出の開示が国際的な潮流となっています。特に欧州や米国、日本をはじめとした主要市場では法規制や開示基準の整備が進み、対応を怠れば法的リスクや市場からの信頼低下につながる可能性があります。
1. 欧州での義務化動向
EUは「企業サステナビリティ報告指令(CSRD)」を導入し、上場企業だけでなく一定規模以上の非上場企業にもGHG排出量開示を義務付けています。この中で、サプライチェーン全体のScope3排出量把握が明記されており、調達方針や取引先の管理体制まで含めた透明性が求められます。また、EUタクソノミー規則とも連動しており、環境に適合する投資先として認定されるためには排出開示が不可欠です。
2. 米国での開示義務化の流れ
米国証券取引委員会(SEC)は「気候関連情報開示ルール案」を発表し、上場企業に対して温室効果ガス排出量の開示を求めています。Scope1・Scope2は原則義務、Scope3は「重要性が高い場合」に開示対象とされる予定ですが、投資家からの圧力も強く、多くの企業が自主的にScope3開示に取り組んでいます。カリフォルニア州ではさらに厳格な州法が制定され、全米での義務化を先取りする動きも見られます。
3. 日本・アジアの動向
日本では金融庁が有価証券報告書におけるサステナビリティ開示強化を進めており、2023年度からはTCFDに沿った気候関連情報の記載が求められるようになりました。Scope3の把握は必須ではないものの、多くの大手企業がグローバル市場を意識して自主的に開示を拡大しています。アジア各国でも同様に、取引先や輸出先での開示義務化に対応するため、地域レベルでのガイドライン策定が進んでいます。
4. 企業が直面する課題
サプライチェーン全体の排出量把握は、取引先が多数に及ぶためデータ収集が大きな負担となります。特に中小企業や海外の取引先ではGHGデータ管理体制が整っていない場合も多く、精度の確保が難しい点が課題です。また、排出係数や算定基準が国際的に統一されていないため、比較可能性の担保も大きなテーマとなっています。
5. 実務対応のポイント
・ データ収集体制の強化:取引先への排出量報告依頼やアンケートを標準化し、定期的にアップデートする仕組みを構築することが重要です。
・ 国際基準の活用:GHGプロトコルやISO14064を基盤に算定を行い、透明性の高い開示を目指すことが求められます。
・ デジタル技術の活用:カーボン会計ツールやブロックチェーンによるデータ管理を導入することで効率性と信頼性を向上できます。
・ ステークホルダー対応:投資家・顧客からの要請に迅速に対応するため、開示データをIR戦略やサステナビリティ報告に組み込む必要があります。
6. まとめ
国際的なサプライチェーンにおける温室効果ガス排出開示の義務化は、今後さらに広がりを見せると予測されます。企業は単なる規制対応にとどまらず、脱炭素経営を推進する戦略的要素として位置づけることが重要です。Scope3排出開示を通じてサプライヤーとの連携を深めることは、持続可能な競争力の確保につながります。


