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4-19. 国連「ビジネスと人権指導原則」の実務的影響

  • yutofukumoto
  • 2025年8月20日
  • 読了時間: 3分

更新日:2025年8月22日

国連「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」は、2011年に国連人権理事会で採択されて以降、企業活動における人権尊重の国際的基準として定着しつつあります。この原則は「国家の保護責任」「企業の尊重責任」「救済へのアクセス」という3本柱から構成され、グローバルに事業を展開する企業に大きな影響を与えています。特にEHS(環境・労働安全衛生)分野と密接に関連し、サプライチェーン全体での人権リスク管理が求められるようになっています。



1. 国家の保護責任と規制強化


UNGPsは国家に対して、企業による人権侵害を防止する法制度や政策の整備を求めています。これを受け、欧州を中心に人権デューデリジェンスの義務化が進行しています。例えば、ドイツの「サプライチェーン・デューデリジェンス法」やフランスの「企業警戒義務法」、EUが検討中の「企業持続可能性デューデリジェンス指令(CSDDD)」などが代表例です。これらの法規制により、日本企業も輸出やサプライチェーンを通じて影響を受けることは避けられません。



2. 企業の尊重責任と実務対応


企業には、自らの事業活動やサプライチェーンにおける人権リスクを特定し、予防・軽減する責任があります。具体的には以下の実務対応が求められます。


・ 人権方針の策定:経営層のコミットメントを明確化し、全社に浸透させる。

・ リスクアセスメントの実施:労働安全、強制労働、児童労働、差別などのリスクを特定。

・ 是正措置とフォローアップ:発見された課題に対して迅速に対応し、改善状況を継続的にモニタリング。

・ 透明性ある情報開示:サステナビリティ報告書やウェブサイトで、人権デューデリジェンスの取り組みを公開。



3. 救済へのアクセスと苦情処理メカニズム


UNGPsは、被害を受けた人々が実効的に救済を受けられる仕組みの整備を企業に求めています。そのため、内部通報制度やサプライヤー向けの苦情受付窓口の設置が推奨されます。企業が救済メカニズムを設けることで、潜在的な紛争の早期解決や企業イメージの保護につながります。



4. 投資家・顧客からの圧力


ESG投資の拡大に伴い、投資家は人権リスクへの対応を企業評価の重要な要素としています。また、大手グローバル企業は調達先に対して人権デューデリジェンスの実施を条件化するケースが増えており、サプライチェーンに属する中小企業にも影響が及んでいます。



5. 実務的課題と今後の展望


多国籍企業であってもサプライチェーン全体の人権状況を完全に把握することは困難であり、データ収集や現地調査には多大なコストがかかります。しかし、UNGPsは法的拘束力こそないものの、各国の規制や投資家の要請に組み込まれつつあり、実質的な国際標準としての地位を確立しています。



まとめ


国連「ビジネスと人権指導原則」は、企業にとって単なる倫理的ガイドラインではなく、経営戦略やサプライチェーン管理に直結する重要な要素となっています。企業が持続可能な成長を実現するためには、UNGPsを基盤にした人権デューデリジェンスを制度化し、透明性のある情報開示を行うことが不可欠です。

 
 
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