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4-3. 中国の環境規制強化 ― 排出取引制度と工場管理への影響

  • yutofukumoto
  • 2025年8月20日
  • 読了時間: 2分

更新日:2025年8月22日

中国は近年、環境問題への取り組みを国家戦略の柱と位置づけ、企業に対する規制を急速に強化しています。その中でも特に注目されるのが、2021年に本格始動した全国規模の排出取引制度(ETS: Emissions Trading System)です。この制度は温室効果ガス排出量の多い産業を対象に、排出量上限を設定し、余剰や不足を市場で売買させる仕組みであり、企業の工場運営や環境マネジメントに大きな影響を及ぼしています。



1. 中国排出取引制度の概要


中国の排出取引制度は現在、火力発電所を中心に数千社の事業者が対象となっています。今後は鉄鋼、セメント、化学、石油精製などエネルギー多消費産業へと対象範囲が拡大される予定です。各企業には排出枠(クォータ)が割り当てられ、排出実績が上限を超える場合は市場で排出枠を購入しなければなりません。これにより、排出削減を進めた企業は余剰枠を販売して利益を得ることも可能となります。



2. 工場管理への影響


排出取引制度は、工場の運営方針に直接的な影響を与えます。まず、エネルギー消費効率の改善や再生可能エネルギーの導入が必須課題となります。また、排出量を正確に把握するため、計測・監視体制(MRV: Monitoring, Reporting, Verification)の構築が求められます。特に、中国当局はデータの正確性を厳しく監査するため、虚偽報告には罰則が科され、企業の信用にも関わります。



3. 日本企業が直面するリスク


中国に生産拠点を持つ日本企業は、この制度の直接的な対象となる可能性があります。さらに、取引先やサプライヤーがETS対象となる場合、間接的に排出削減やコスト転嫁の影響を受けるリスクもあります。また、環境規制違反は企業の社会的評価や取引停止にもつながるため、単なる工場管理にとどまらず、経営戦略上の課題となります。



4. 実務対応のポイント


・ 排出量データ管理の徹底:MRV体制を整え、正確かつ透明性の高いデータを記録。

・ 省エネ投資の推進:高効率ボイラーや廃熱回収設備の導入、再エネ電力への転換。

・ 内部カーボンプライシングの導入:炭素コストを社内経営指標に組み込み、投資判断に反映。

・ サプライチェーン連携:現地サプライヤーにも排出削減要求を行い、全体最適化を図る。



まとめ


中国の環境規制強化は、工場管理におけるコスト増という側面だけでなく、省エネ・低炭素化を通じた競争力強化の契機ともなります。日本企業にとっては、ETS対応をリスク管理として位置づけるだけでなく、積極的に取り組むことで現地市場での信頼を高め、グローバル競争における優位性を確立することが重要です。

 
 
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