4-5. インドにおける労働安全衛生法制改革と外資企業の対応
- yutofukumoto
- 2025年8月20日
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更新日:2025年8月22日
インドでは近年、労働安全衛生に関する法制度の大幅な改革が進められており、外資企業にとっても重要な対応課題となっています。従来、インドの労働関連法は州ごとに複雑に分散しており、企業側は規制の把握や遵守に大きな負担を抱えていました。しかし、2020年に「労働法典(Labour Codes)」として統合的な枠組みが制定され、その中で「労働安全衛生・労働条件・社会保障法(Occupational Safety, Health and Working Conditions Code: OSH Code)」が新たに導入されました。これにより、労働環境改善と労働者保護の強化が進められています。
1. OSH Codeの概要
OSH Codeは、既存の13の労働安全衛生関連法を統合し、全国で統一的に適用される法制です。対象は工場、鉱山、建設業、倉庫など多岐にわたり、労働者の安全衛生確保、労働条件の改善、福利厚生の充実を目的としています。具体的には、事業所規模に応じた安全管理者や衛生委員会の設置義務、労働者に対する定期健康診断の実施、作業環境測定や防護具の提供などが求められます。
2. 外資企業への影響
外資系企業にとって、インド労働法制改革はコンプライアンス体制の見直しを迫るものです。特に製造業を中心に、労働災害防止措置や化学物質管理に関する基準が厳格化されており、国際基準に準じたEHS(環境・労働安全衛生)マネジメントが必要になります。また、当局による立入検査や罰則強化も進められており、違反時には操業停止や多額の罰金リスクがあるため、早急な対応が欠かせません。
3. 実務対応のポイント
・ 法令モニタリング体制の構築:州ごとの差異や今後の改正動向を常に確認する仕組みが必要です。
・ EHS管理体制の整備:ISO45001やISO14001など国際規格に基づく内部体制を構築し、現地法規制との整合性を確保することが有効です。
・ 労働者教育の強化:安全衛生教育や訓練を定期的に実施し、現場レベルでの安全文化を根付かせる必要があります。
・ サプライヤー管理:現地の下請けや協力工場も含め、OSH Codeに準拠した労働環境が維持されているか監査することが重要です。
4. 日本企業が直面する課題と機会
日本企業にとってインド市場は成長が期待される一方、労働力の多様性や現地文化に対応した柔軟なEHSマネジメントが求められます。リスク管理を強化することは単なる法令遵守にとどまらず、企業ブランドの向上や優秀人材の確保にも直結します。さらに、ESG投資やサステナビリティ経営の観点からも、インドにおける労働安全衛生への積極的な取り組みは国際競争力強化につながると言えます。
まとめ
インドの労働安全衛生法制改革は、外資企業にとってリスクであると同時にチャンスでもあります。OSH Codeに基づいた体制をいち早く構築し、労働環境改善を推進することは、持続可能な事業展開と企業価値向上に直結します。


