6-10. ISO認証返上を余儀なくされた企業の不適合事例
- yutofukumoto
- 8月20日
- 読了時間: 3分
更新日:8月22日
ISO認証は品質、環境、安全衛生などのマネジメントシステムが国際基準に適合していることを示す重要な証明です。しかし、一度取得したからといって永久に保持できるものではなく、維持審査や更新審査で重大な不適合が発覚した場合、認証の停止や返上を余儀なくされることがあります。本稿では、ISO認証を返上した企業の典型的な不適合事例と、その背景、再発防止に向けた教訓について解説します。
1. 文書管理の不備による不適合
多くの企業で見られるのが、文書管理や記録保持の不十分さです。例えばISO9001やISO14001では、手順書や作業記録を正確かつ最新状態で維持することが求められますが、古い版の文書を使用し続けたり、記録の改ざんが疑われるケースが発覚すると、重大な不適合とされます。これにより、マネジメントシステム全体の信頼性が損なわれ、審査機関から認証返上を指示されることがあります。
2. 法令遵守違反の放置
ISO認証においては法規制遵守が大前提です。特にISO14001(環境マネジメント)やISO45001(労働安全衛生マネジメント)では、環境関連法規や労働安全衛生法令の遵守状況が重点的に確認されます。廃棄物処理法や化学物質管理に関する法令違反、労災防止措置の不備などを放置していた企業では、是正要求が果たされないまま認証維持が不可能となり、返上を余儀なくされる事例があります。
3. 内部監査とマネジメントレビューの形骸化
ISOの根幹であるPDCAサイクルを回すためには、内部監査とマネジメントレビューの実効性が不可欠です。しかし、一部の企業では形式的に実施しているだけで、不適合を是正せずに報告書を形だけ残すという状況が見られます。経営層がマネジメントシステムを軽視している場合、この傾向が顕著になり、審査で指摘を受け続けた結果、認証を維持できなくなります。
4. 継続的改善の欠如
ISO認証の特徴は「継続的改善」が求められる点にあります。しかし、取得後に改善活動が停滞し、従業員教育や設備更新が疎かになると、審査機関から改善不足を指摘されます。特に品質不良や環境事故、労働災害が繰り返し発生しているにもかかわらず、再発防止策が形骸化している場合、認証の信頼性は大きく損なわれます。
5. 認証返上の経営的影響
ISO認証を返上した企業は、取引先や投資家からの信頼を失い、入札参加資格を失うなど事業機会を大きく減らすリスクを負います。特にグローバル市場ではISO認証が取引の前提条件となることが多いため、返上は国際競争力の低下につながります。また、社内における安全・品質・環境への意識低下が連鎖的に発生し、事故や不祥事のリスクが高まることも懸念されます。
6. 再発防止に向けた教訓
不適合事例から学ぶべきは、ISO認証を単なる「取得実績」と捉えるのではなく、経営に根付いた仕組みとして機能させる必要があるという点です。具体的には、経営層の強いコミットメント、従業員教育の徹底、内部監査体制の強化、外部専門家の活用などが効果的です。さらに、法令遵守を基盤とした持続的改善を継続することで、ISO認証は単なる資格ではなく、企業の信頼性と競争力を高める資産となります。
まとめ
ISO認証返上に至る企業の多くは、形骸化したマネジメントシステムと安全文化の欠如に共通点があります。不適合の早期是正と改善文化の定着が、認証維持のみならず企業の持続可能性を左右すると言えます。


