6-17. ESG評価機関による低評価につながった情報開示不備の事例

ESG評価は、投資家や金融機関が企業の持続可能性やリスク管理能力を測る重要な指標となっています。しかし、適切な情報開示が行われない場合、企業の取り組みが正当に評価されず、低評価につながる事例が増えています。ESG評価における情報開示不備は、投資機会の喪失や資金調達コストの上昇に直結するため、経営層にとって大きなリスクとなります。本記事では、情報開示不備による低評価の典型的事例とその教訓を解説します。

1. ESG評価における情報開示の重要性

ESG評価機関は、公開情報をもとに環境（E）、社会（S）、ガバナンス（G）の観点からスコアを算出します。企業が十分な情報を開示しなければ、たとえ実際に高度な取り組みを行っていても、その成果が正しく評価されません。特に気候変動対応や人権デューデリジェンス、取締役会の独立性などは、開示不足が致命的な低評価につながる項目です。

2. 情報開示不備が招いた低評価の事例

ある製造業の企業では、温室効果ガス排出削減の取り組みを進めていたにもかかわらず、第三者検証を受けていない排出データを公表していたため、評価機関から「信頼性不足」と判断されました。その結果、ESG格付けが大幅に引き下げられ、主要投資家からの投資除外リストに掲載されました。

また、別の事例では、労働安全衛生に関するデータを一部の工場のみで集計し、グローバル全体の数値を示していなかったため、情報の網羅性が欠けるとされ、サステナビリティ報告の信頼性が低いと評価されました。

3. 企業への影響

ESG低評価は、投資家からの信頼低下や資本市場での調達条件悪化につながります。さらに、取引先からの選定基準にも影響し、サプライチェーン全体での事業機会を失うリスクもあります。低評価は短期的な株価下落だけでなく、長期的なブランド価値の毀損を引き起こすため、経営に深刻な影響を与えます。

4. 再発防止に向けた取り組み

情報開示不備を防ぐためには、以下の対策が有効です。

・　国際基準（GRI、SASB、ISSBなど）に準拠した開示フレームワークを導入する。

・　第三者保証や外部監査を活用し、データの信頼性を担保する。

・　部門や地域ごとのデータを統合管理し、網羅的かつ一貫性のある情報を提供する。

・　投資家や評価機関の視点を取り入れたマテリアリティ分析を実施する。

まとめ

ESG評価における低評価の多くは、企業活動そのものの不十分さではなく、情報開示の不備によって引き起こされています。透明性と信頼性を高めた情報開示体制を整備することは、投資家との信頼関係を築き、持続的成長を実現するうえで不可欠です。