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6-19. 技術導入に依存しすぎた結果起きた新たなEHSリスク

  • yutofukumoto
  • 8月20日
  • 読了時間: 3分

更新日:8月22日

近年、AIやIoT、ロボティクスなどの最新技術を活用したEHS(環境・労働安全衛生・健康)管理が注目を集めています。これらの技術は、リスクの見える化や事故予防に大きな効果をもたらしますが、一方で「技術に依存しすぎることによって新たなEHSリスクが生まれる」という課題も浮き彫りになっています。技術活用は有効であるものの、過信や誤用は重大なリスクにつながるため、その限界を理解し適切に補完する仕組みが必要です。



1. 技術依存によるリスクの顕在化


ある製造業の企業では、IoTセンサーによるリアルタイム監視システムを導入し、現場の温度・湿度・有害物質濃度を自動で検知できる体制を整えました。しかし、センサーの故障や通信障害によりデータが正しく取得されず、異常が見逃されてしまいました。その結果、労働者が有害物質に長時間曝露し、健康被害が発生する事例が報告されています。このように、技術に頼りすぎて人による確認や二重チェックを省いたことが、リスクを増大させる要因となります。



2. 自動化による「油断」とヒューマンエラー


自動化やAI解析に依存しすぎることで、人間の警戒心やリスク感知能力が低下するケースもあります。例えば、AIによる不安全行動検知システムを導入した企業では、従業員が「AIが見ているから大丈夫」と考えるようになり、現場での自主的な安全確認が疎かになりました。結果として、システムが検知できなかった異常や人為的な不注意による事故が多発し、逆に労働災害の件数が増えるという逆効果を招きました。



3. 技術リスクの過小評価


新技術導入時には、通常のEHSリスクだけでなく「技術固有のリスク」を評価することが欠かせません。しかし、多くの企業ではその評価が十分に行われていないのが実情です。AIのアルゴリズムバイアスによる誤判定、ドローンによる設備点検中の墜落事故、クラウド型EHSシステムへのサイバー攻撃による情報流出など、新しいリスクは常に潜んでいます。


4. 防止策と教訓


技術導入によるEHSリスクを最小化するには、以下のような取り組みが求められます。


・ 技術に依存しすぎず、人間による監視・確認を残す「二重チェック体制」を構築する。

・ 新技術導入時にリスクアセスメントを徹底し、潜在的リスクを洗い出す。

・ 技術トラブル発生を前提に、バックアップ体制や代替手段を準備する。

・ 従業員に対して「技術は補助であり、安全確保の主体は人間である」という意識を浸透させる。



まとめ


技術導入はEHS管理の高度化に大きな貢献を果たしますが、過度な依存は新たなリスクを生み出します。企業は「技術の恩恵を最大限に活かしつつ、その限界を補う人間中心のマネジメント」を実現することが重要です。技術と人間の適切な役割分担こそが、安全で持続可能なEHS経営の基盤となります。

 
 
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