6-9. 内部通報制度が機能しなかった企業の安全文化の問題点
- yutofukumoto
- 2025年8月20日
- 読了時間: 3分
更新日:2025年8月22日
内部通報制度は、企業におけるリスクの早期発見と是正に欠かせない仕組みですが、実際には形骸化し、重大な不祥事や労働災害を未然に防げなかった事例が少なくありません。内部通報が機能しない背景には、企業の安全文化や組織風土に深刻な問題が潜んでいることが多いです。本稿では、内部通報制度が機能しなかった要因と、安全文化醸成に向けた改善策を考察します。
1. 内部通報制度が機能不全に陥る典型的要因
内部通報が正しく活用されない原因として、まず「通報者への報復や不利益処遇への恐れ」が挙げられます。制度が整っていても、通報後に人事評価やキャリア形成で不利になると認識されれば、従業員は声を上げません。次に「通報先の独立性不足」があります。通報窓口が上司や人事部門に限られている場合、利害関係が絡み、問題が握りつぶされるリスクが高まります。さらに「対応の遅さや不透明さ」も信頼を失う要因であり、通報しても改善につながらないと分かれば、従業員は沈黙を選ぶようになります。
2. 安全文化における組織風土の欠陥
内部通報が活かされない組織には、共通して「心理的安全性の欠如」が見られます。従業員が自由に意見を言えず、失敗やリスクを報告することが評価や人間関係に悪影響を及ぼすと感じる職場では、潜在的な危険は隠されます。また、経営層が「生産性や利益を優先し、安全は後回し」とする価値観を持っている場合、現場では通報よりも黙認が選ばれがちです。このような環境では、形式的な内部通報制度があっても、実効性は発揮されません。
3. 内部通報制度が機能しなかった事例の影響
内部通報が機能せず重大事故や不正が顕在化した場合、その影響は甚大です。労働災害につながれば人的被害に直結し、企業は法的責任や社会的批判を受けます。不正会計や環境法令違反であれば、株価下落や取引先からの信頼喪失につながり、経営継続に深刻な打撃を与えます。実際に、一部の企業では内部通報が数年前から寄せられていたにもかかわらず放置され、大規模事故やコンプライアンス違反につながったケースが報告されています。
4. 機能する内部通報制度に向けた改善策
内部通報制度を実効性あるものにするためには、以下の施策が有効です。
・ 匿名性の担保:外部窓口や第三者機関を活用し、通報者の特定を困難にする。
・ 通報者保護の徹底:報復禁止を明文化し、違反者には厳格な処分を行う。
・ 迅速かつ透明な対応:通報内容の調査プロセスと結果を可能な範囲で共有し、信頼を構築する。
・ 経営層の関与:経営トップが内部通報の重要性を明確に示し、安全文化を優先する姿勢を打ち出す。
・ 教育と啓発:従業員に対して制度の意義と利用方法を周知徹底し、通報が組織改善につながることを理解させる。
5. まとめ
内部通報制度が機能しない背景には、制度の不備だけでなく、企業文化そのものの問題があります。真に効果的な制度を構築するには、心理的安全性を高め、通報が「組織を良くする行為」として認識される安全文化を根付かせることが不可欠です。内部通報制度を経営リスクの回避策にとどめず、持続的成長と信頼獲得の基盤として活用することが求められます。


