7-7. 多国籍チームで実施するEHS教育の言語・文化的配慮
- yutofukumoto
- 8月20日
- 読了時間: 3分
更新日:8月22日
グローバル化が進む現代において、多国籍チームでの業務遂行は一般的になっています。企業のEHS(環境・健康・安全)教育においても、多様な言語や文化を背景とする従業員を対象とする場面が増えています。しかし、言語の壁や文化的な価値観の違いを軽視すると、安全ルールが正しく伝わらず、重大な事故やコンプライアンス違反につながるリスクが高まります。そのため、EHS教育では言語的・文化的な配慮が欠かせない戦略的要素となっています。
1. 言語の壁を克服するための工夫
多国籍チームのEHS教育において最も顕著な課題は言語の違いです。教育資料を対象者の母語に翻訳することは基本ですが、単なる直訳では誤解を招く恐れがあります。専門用語や安全標識は国ごとに表現が異なるため、実際の作業環境に合わせた「意訳」や視覚的教材(ピクトグラム、動画、図解マニュアル)を活用することが効果的です。また、リアルタイムでの通訳や、多言語に対応したEラーニングシステムを導入することで、教育の均質化を図る企業も増えています。
2. 文化的背景を考慮した教育設計
文化の違いは安全行動やリスク認識にも影響を与えます。例えば、階層的な文化では部下が上司に意見を言いにくく、ヒヤリハット報告が抑制される可能性があります。また、集団主義の文化では個人の安全よりもチーム全体の効率が優先されることもあります。こうした文化的背景を理解し、教育プログラムに反映することが重要です。具体的には、ロールプレイ形式で実際の場面を疑似体験させたり、多文化間でのディスカッションを促進することで、相互理解と安全意識の共有が進みます。
3. 教育担当者に求められるスキル
多国籍チームへのEHS教育を成功させるためには、教育担当者自身が異文化理解に長けている必要があります。単に安全知識を伝えるだけでなく、相手の文化的背景を尊重しながらコミュニケーションを取るスキルが欠かせません。また、教育の効果を定期的に評価し、理解度の違いや誤解を修正するプロセスを組み込むことも重要です。
4. グローバル企業におけるベストプラクティス
多国籍チームを抱えるグローバル企業の中には、各拠点にローカルの安全担当者を配置し、本社が統一的な教育方針を示すモデルを採用している事例があります。これにより、現地文化に根ざした指導が可能となり、同時にグローバル基準の一貫性も確保できます。また、ゲーム要素を取り入れた多言語対応の教育アプリや、VR/ARによる実践的な安全訓練なども導入され、教育効果の向上が報告されています。
まとめ
多国籍チームでのEHS教育では、言語的・文化的な配慮を欠かさず、現場の実情に即した教育設計を行うことが不可欠です。言語の壁を克服し、文化の違いを尊重するアプローチを取り入れることで、グローバルな安全文化の醸成と企業の持続的成長につながります。


