8-11. グリーントランスフォーメーション（GX）とEHSの関係

グリーントランスフォーメーション（GX）は、気候変動対策や資源循環を推進し、持続可能な社会と経済への転換を目指す取り組みです。その中でEHS（環境・健康・安全）は、GXを実現するための基盤的要素として重要な役割を果たしています。GXが単なる環境施策にとどまらず、企業活動全体に浸透するためには、EHSの視点を統合することが欠かせません。

まず、GXと環境（Environment）の関係では、再生可能エネルギーの導入、省エネ設備の更新、廃棄物削減などの取り組みが企業に求められます。これらはEHSの環境マネジメントと直結しており、GXの進展と同時に環境負荷低減の実効性が高まります。また、カーボンニュートラルの達成には、温室効果ガス排出量の正確な測定・開示が不可欠であり、EHS部門が担う環境データ管理の高度化が重要となります。

次に、健康（Health）との関連では、GXによる新しい産業構造や働き方の変化に伴い、労働者の健康リスクも変化します。たとえば、再生可能エネルギー分野や新素材開発における化学物質の取り扱いは、新たな健康被害を防ぐために厳格なEHS管理が求められます。さらに、GXによる産業変革の中で労働環境の変化に柔軟に対応できる健康経営の推進が企業価値向上につながります。

また、安全（Safety）の観点では、GX関連技術の導入に伴う新しいリスクへの対応が不可欠です。水素エネルギーやバッテリー技術などは将来性が高い一方で、爆発や火災などのリスクを伴います。そのため、安全教育やリスクアセスメントを徹底し、GX推進と同時に労働災害を防止する仕組みを整えることが必要です。

さらに、GXを推進する上では、国際的な規制や基準（EUタクソノミー、ISSB基準など）に対応したEHS体制の強化が企業の競争力に直結します。EHSとGXの統合は、規制遵守のみならず、投資家やステークホルダーからの信頼を獲得するうえで不可欠です。

総じて、グリーントランスフォーメーションとEHSは相互に補完し合う関係にあり、GXの成功はEHSの適切な実践によって支えられます。企業はGX推進に際し、環境負荷低減だけでなく、労働者の健康・安全確保を重視することで、持続可能な成長と社会的信頼の獲得を同時に実現できるのです。