8-3. サーキュラーエコノミーとEHS実務の接点
- yutofukumoto
- 8月20日
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更新日:8月22日
サーキュラーエコノミーは、廃棄物を資源として再利用し、持続可能な社会を実現する新しい経済モデルとして注目されています。従来の「大量生産・大量消費・大量廃棄」型から循環型の仕組みに移行することは、企業にとって環境対応だけでなく新たな競争力の源泉となります。この動きの中で、EHS(環境・健康・安全)実務は重要な役割を担っており、その接点を明確にすることが企業価値向上に直結します。
第一に、廃棄物管理と資源循環の強化です。EHS部門は廃棄物処理の法令遵守を徹底すると同時に、廃棄物削減や再資源化の仕組みづくりに関与します。例えば、製造工程から出る副産物をリサイクル素材として活用する仕組みや、廃棄物発生量のモニタリングを行うことで、サーキュラーエコノミーを支える基盤を整備できます。
第二に、化学物質管理と安全性の確保です。循環利用を進める過程では、リサイクル素材に含まれる化学物質のリスク評価や規制対応が欠かせません。EHS担当者はREACH規制や各国の化学物質関連法に対応しつつ、サプライチェーン全体で安全に使用できる体制を構築する必要があります。これは、持続可能な資源利用と従業員や地域社会の安全確保の両立につながります。
第三に、ライフサイクル全体での環境負荷低減です。製品設計段階からリサイクル性や省資源性を考慮するエコデザインを推進することで、製品廃棄後の環境負荷を最小化できます。EHS部門はLCA(ライフサイクルアセスメント)を用いて、製品やサービスの環境影響を数値化・可視化し、改善提案を行う役割を果たします。
第四に、労働安全と新しい働き方の支援です。リサイクル産業や資源回収の現場では新しい作業工程やリスクが発生するため、安全管理体制の強化が求められます。EHS部門はリスクアセスメントを行い、従業員に対する教育や適切な保護具の導入を通じて労働安全を確保します。
さらに、ステークホルダーへの情報開示も重要な接点です。投資家や顧客はサーキュラーエコノミーに取り組む企業を評価し、企業ブランドやESG評価に影響します。EHS部門は、環境報告やサステナビリティ報告書において、廃棄物削減率やリサイクル率などの指標を明確に提示することで、企業の信頼性を高めることができます。
このように、サーキュラーエコノミーの推進は単なる環境対策ではなく、EHS実務のあらゆる領域と密接に関わっています。廃棄物管理、化学物質規制、労働安全、情報開示といった具体的な業務を通じて、EHS部門は循環型社会の実現に大きく貢献しているのです。


