top of page

1-10. EU RoHS指令と日本企業が輸出時に直面する課題

  • yutofukumoto
  • 2025年8月19日
  • 読了時間: 3分

更新日:2025年8月22日

EU RoHS指令(Restriction of Hazardous Substances Directive)は、電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用を制限する規制であり、2006年に施行されて以来、改正を重ねながら適用範囲が拡大しています。現在は鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、臭素系難燃剤(PBB、PBDE)、フタル酸エステル類など10物質が制限対象であり、特定用途を除き、一定濃度を超える含有は認められません。日本企業がEU市場に製品を輸出する場合、RoHS適合は必須要件であり、不適合が発覚すれば販売停止やリコール、罰金のリスクを負います。


日本企業が直面する課題の第一は、サプライチェーン管理の複雑さです。電気・電子製品は多数の部品や材料で構成されており、全ての部材がRoHS規制を満たしていることを証明する必要があります。一次仕入先だけでなく、その先の二次・三次サプライヤーまで遡及的に確認を行う必要があり、調達先が海外にまたがる場合は言語・法規制認識の違いが障壁となります。部材メーカーからの化学物質含有情報が不十分で、SDS(安全データシート)の内容だけではRoHS適合性を判断できないケースも少なくありません。


第二の課題は、適合証明と技術文書の整備です。RoHS指令に対応するためには、製品ごとに「適合宣言書(DoC)」を作成し、規制に準拠していることをCEマーキングと共に示さなければなりません。また、規制適合を裏付ける技術文書を社内で保存する義務があり、監査や市場監視で求められた際には迅速に提出する必要があります。日本企業では、文書管理が製造現場や品質保証部門に分散していることが多く、必要な証拠が統一的に管理されていないため、対応が遅れるリスクがあります。


第三の課題は、規制改正への対応力です。RoHS指令は対象物質や適用範囲が定期的に見直され、追加規制が行われています。例えば、2019年にはフタル酸エステル類4物質が追加され、多くの日本企業が対応に追われました。今後も新たな有害物質が候補として検討されており、法改正を迅速にキャッチアップできなければ、輸出計画に支障をきたします。特に中小企業では、専門人材や情報収集体制が不十分で、変更への対応が後手に回ることが課題です。


さらに、日本企業特有の課題として「グローバル調達と国内慣習のギャップ」が挙げられます。日本国内では自主的なグリーン調達ガイドラインに基づく取引が中心であるのに対し、EUでは法的強制力を持った適合証明が要求されます。この差を理解せずに従来の国内基準で対応すると、輸出時に適合証明が不十分と判断され、通関や販売でトラブルとなるリスクがあります。


解決のためには、①サプライチェーン全体をカバーする化学物質管理体制の構築、②文書・証拠の一元管理システムの導入、③規制改正情報のモニタリング体制の確立、④社内教育と海外取引先との情報共有強化が求められます。RoHS対応は単なる法令遵守にとどまらず、製品の信頼性や国際競争力を左右する重要要素であり、日本企業にとって持続的な輸出ビジネスの基盤となるのです。

 
 
bottom of page