top of page

1-14. RBA(Responsible Business Alliance)行動規範と人権デューデリジェンスの実務

  • yutofukumoto
  • 2025年8月19日
  • 読了時間: 3分

更新日:2025年8月22日

RBA(Responsible Business Alliance)は、電子機器業界を中心としたグローバル企業連合が策定したサプライチェーンにおけるCSR規範であり、人権、労働、安全衛生、環境、倫理といった領域での責任ある事業活動を求めています。加盟企業にはApple、Intel、Sonyなどの大手が名を連ねており、RBA行動規範は事実上の業界標準となっています。日本企業がグローバルサプライチェーンに参入・維持するためには、この行動規範の理解と遵守が不可欠です。


RBA行動規範の柱は五つに分類されます。①労働:強制労働や児童労働の禁止、差別の排除、適正賃金と労働時間管理、結社の自由の尊重など。②安全衛生:職場における災害防止、緊急時対応、衛生的な設備、労働者の健康促進。③環境:有害物質管理、省エネルギー、廃棄物削減、環境汚染の防止。④倫理:贈収賄の禁止、情報開示の透明性、知的財産権の尊重。⑤マネジメントシステム:方針策定、リスク評価、監査と是正、労働者からの通報窓口整備など。これらは単なる宣言ではなく、取引先監査やサプライヤー契約の中で具体的な遵守事項として求められます。


特に近年重要性を増しているのが「人権デューデリジェンス」です。これは国連「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」を基盤とし、企業がサプライチェーン全体における人権リスクを特定・予防・是正するプロセスを指します。日本企業は直接雇用する従業員だけでなく、委託先や原材料調達先における強制労働、過重労働、差別などの人権侵害リスクも把握し、対応する責任を負います。特に東南アジアや中国の工場における労務環境、鉱物調達における紛争鉱物問題などは典型的なリスク領域です。


実務上のステップは、まず方針策定とリスク評価から始まります。人権方針を経営層が明示し、サプライチェーン全体を対象としたリスクマッピングを行います。次に、現地調査やサプライヤーへのアンケート、監査を通じてリスクを特定します。その結果に基づき、是正措置を取引先と協議し、必要に応じて取引条件の見直しや改善支援を行います。また、労働者からの苦情処理メカニズムを設け、外部からの指摘にも対応できる体制を整備することが重要です。


人権デューデリジェンスは一度の対応で完了するものではなく、継続的な改善サイクルが求められます。RBA行動規範に基づく第三者監査(VAP監査など)を活用し、自社およびサプライヤーの実態を定期的に評価することが有効です。監査で不適合が見つかれば、是正措置計画(CAP)を策定し、進捗を追跡する仕組みを構築する必要があります。


日本企業の課題としては、①人権デューデリジェンスに関する専門人材の不足、②サプライヤーへの影響力の限界、③国内外での情報開示要求の高まりへの対応遅れ、が挙げられます。欧米ではすでに人権デューデリジェンスを義務化する法規制が進んでおり、対応が不十分な企業は取引から排除されるリスクが高まっています。


結論として、RBA行動規範と人権デューデリジェンスは、サプライチェーン全体に責任を持つことを企業に求める国際的な枠組みです。日本企業は形式的な遵守ではなく、実効性ある仕組みを社内外に構築し、透明性の高い情報開示を行うことで、国際社会からの信頼を獲得し持続的な事業展開を可能にする必要があります。

 
 
bottom of page