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1-2. 化学物質管理の要:PRTR法(化管法)の実務対応と違反事例

  • yutofukumoto
  • 2025年8月19日
  • 読了時間: 3分

更新日:2025年8月22日

PRTR法(化学物質排出把握管理促進法、通称「化管法」)は、企業が取り扱う特定化学物質の環境への排出量や移動量を把握し、国に報告することを義務付ける法律です。目的は、有害性のある化学物質による環境リスクを低減し、事業者・行政・国民が情報を共有して化学物質管理を強化することにあります。製造業や化学関連事業だけでなく、幅広い業種の企業が対象となるため、コンプライアンス上の重要性が非常に高い法律です。


実務上の対応として、まず重要なのは対象物質と数量の把握です。PRTR法で規定される対象化学物質は400種類以上あり、これらを年間1トン(特定第一種は0.5トン)以上取り扱う事業者は報告義務を負います。実際には製造工程だけでなく、塗装、洗浄、メンテナンスなど多様な場面で化学物質が使用されるため、正確なインベントリの作成が不可欠です。特に子会社や外注先を含めたサプライチェーン管理も重要となっており、単に自社分だけを集計すれば良いというものではありません。


次に、排出量・移動量の算定方法を確立する必要があります。排出量は、大気、水域、土壌、事業場外移動(廃棄物処理業者への委託など)に分けて算出しなければなりません。算定には、実測値を用いる場合と、係数や推計式を用いる場合があり、後者を選ぶ企業が多いですが、その場合も根拠資料の保存が義務付けられています。監査や行政調査では、計算過程の透明性と妥当性が重視されるため、社内でのダブルチェック体制を整えることが求められます。


違反事例として多く見られるのは、対象物質の取り扱い量を過小評価して報告を怠ったケースです。例えば、工場で使用する溶剤の合計量が閾値を超えていたにもかかわらず、一部の使用を「少量だから対象外」と誤解して未報告とした事例があります。また、廃棄物処理委託先の管理が不十分で、処理過程での移動量が把握できず、結果として不完全な報告となったケースもあります。これらはいずれも行政指導や改善命令の対象となり、社会的信用を大きく損なう結果につながりました。


さらに近年は、PRTR法違反がESG評価や投資家からの信頼低下につながるリスクも指摘されています。化学物質管理の不備は、労働安全や環境保護に対する企業姿勢そのものへの疑念につながりやすく、グローバル展開する企業にとっては海外本社や取引先からの厳しい追及を受けることも少なくありません。


企業が取るべき対策は、①対象物質リストの網羅的な更新、②排出・移動量の正確な算定プロセス確立、③SDSや廃棄物管理との情報連携、④社内教育の徹底、の4点が基本です。特に現場担当者への教育不足は誤報告の温床となるため、年1回以上の研修やマニュアル整備が不可欠です。


PRTR法への対応は単なる義務ではなく、化学物質管理レベルを向上させる絶好の機会でもあります。透明性の高い報告とリスク管理を徹底することが、企業のコンプライアンス体制強化と信頼性向上に直結します。

 
 
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