top of page

1-4. 廃棄物処理法の排出事業者責任 ― 監査で必ず問われるチェック項目

  • yutofukumoto
  • 8月19日
  • 読了時間: 3分

更新日:8月22日

廃棄物処理法(正式名称:廃棄物の処理及び清掃に関する法律)は、事業活動に伴って発生する産業廃棄物の適正処理を定める重要な環境法規です。なかでも「排出事業者責任」は同法の中核的な考え方であり、廃棄物を委託処理した場合でも、排出した事業者が最終的な処理結果に責任を負います。行政監査やEHS監査においても必ず確認される論点であり、違反は不法投棄や環境汚染、社会的信用失墜につながります。ここでは、排出事業者責任に関して特に監査で問われるチェック項目を整理します。


第一のチェックポイントは、委託契約の適正性です。排出事業者は、処理を委託する際に必ず「産業廃棄物処理委託契約書」を締結しなければなりません。この契約書は書面または電子契約での締結が認められますが、契約内容が法令に則しているか、最新のフォーマットが用いられているかが問われます。形式だけでなく、処理する廃棄物の種類や数量、処理方法、処理業者の許可番号など、具体的な事項が正確に記載されているかどうかも重要です。


第二のポイントは、処理業者の許可確認です。委託先が都道府県や政令市から正式に許可を受けた業者かどうかを確認し、その許可証を写しで保管しているかが監査対象となります。許可の有効期限や対象となる廃棄物の種類に誤りがあると、委託そのものが違法と判断される可能性があります。特に許可の更新を失念していた事例や、廃棄物の種類が許可範囲外であった事例は、過去に不法投棄問題へと発展しています。


第三の監査項目は、マニフェスト(産業廃棄物管理票)の適切な運用です。排出事業者は、委託処理の際にマニフェストを交付し、最終処分完了までの流れを追跡・確認する義務を負います。監査では、マニフェストが全件発行されているか、返送されたB票・D票・E票が適切に保存されているか、保存期間(5年間)が守られているかが確認されます。返送の遅延や未返送は、委託先での不適正処理の兆候と見なされるため、迅速なフォローが求められます。


第四のチェックポイントは、現地確認の実施です。排出事業者は書類上の確認だけでなく、委託先の処理施設を定期的に訪問し、適正処理が行われているかを直接確認することが強く推奨されています。近年の監査では「委託先確認記録」の有無が重視されており、現地訪問を行った頻度や確認内容を記録・保管しているかが問われます。これを怠ると、委託先の不法投棄発覚時に排出事業者の監督責任が厳しく追及されます。


さらに、監査で見逃されがちなのが、廃棄物の分類と保管状況です。一般廃棄物と産業廃棄物の区別、特別管理産業廃棄物(廃油、廃酸、感染性廃棄物など)のラベル表示、保管場所の明示や漏洩防止措置が適切に実施されているかが確認されます。保管基準違反は労働安全衛生上のリスクにも直結するため、EHSの観点からも重点項目となります。


まとめると、廃棄物処理法に基づく排出事業者責任に関して監査で必ず問われるのは、①契約書の適正性、②処理業者の許可確認、③マニフェストの管理、④現地確認の実施、⑤廃棄物の分類・保管状況の遵守、の5点です。これらは単なる形式的チェックではなく、企業が不法投棄や環境事故を未然に防ぐための基本的な仕組みです。排出事業者責任を軽視すれば、法的リスクだけでなく、企業価値の大幅な毀損につながります。企業は監査を契機に自社の管理体制を見直し、コンプライアンスと信頼性を同時に高める必要があります。

 
 
bottom of page